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第六章 内臓男と“事件の影”

ผู้เขียน: 神夜 紗希
last update ปรับปรุงล่าสุด: 2026-01-01 09:03:10

鏡迷路から逃げて、悠がトイレへ走り去ったあと、

デパート内は静寂に包まれていた…

美咲は一人きりも嫌だったが、トイレの側で待つのはもっと嫌だった。

最初の恐怖がフラッシュバックするからだ。

扉から垂れてきた足…

這いずる女…

美咲はブルッと身震いし、首を横に振った。

考えちゃダメだ……と無理やり意識をそらす。

一人になると、一気に疲れが込みあげてきた。

(どこか……座りたい……)

見渡すと、先ほど悠と軽食を食べたフードコートがある。

美咲は周囲を警戒しながらゆっくり歩き、鏡迷路に背を向けて、椅子にストンと腰を下ろした。

ふぅ〜……っと長い息が漏れ、身体が沈んでいく。

鏡迷路を出たあとも、胸の奥のざわつきは消えなかった。

あの白い手、鏡に貼りつく血の跡──

そして、自分だけが“視えていた”という事実。

最後に背中に刺さった、あの視線。

思い返すだけで、身体の芯がまだ震えていた。

(……なんで、私だけ……?)

無意識に両腕をさすりながら、美咲はふと気づく。

デパートに入ったときに目に入った、あの“通り魔事件”の張り紙。

胸の奥が暗く沈んだ、あの嫌な気配。

(まさか……本当に関係してる……?)

認めたくなくて、ずっと考えないようにしていた。

でも、這いずり女も鏡迷路の出来事も──無関係と言い切れなかった。

(……調べなきゃ)

美咲は深く息を吸い、震える指先でスマホを開く。

デパートに入る前から続いていた違和感。

事件の張り紙を見たとき胸に落ちた黒い重さ。

それが今の怪異と一本の線で繋がるようで──

(噂のままで終わらせたら……ダメだ)

美咲は画面をスクロールした。

“あの事件の本当のことを知らないままじゃ、前に進めない気がした。”

検索結果に、見覚えのあるタイトルが表示される。

『199X年●●デパート通り魔事件』

「……これだ。」

美咲はゴクリと息を呑んだ。

地元で起きた最大級の事件。

幼いころ、断片的に耳にした断片だけが記憶に残っている。

『人が亡くなったらしい』

『犯人が逃げたらしい』

そんな噂話だけが、自分の周りを飛び交っていた。

両親も詳細は話さなかった。

知らなかったからなのか、子供に話せない内容だったのか──今となっては分からない。

美咲は記事をタップした。

「……っ」

喉が固まり、息が止まる。

画面には、無表情の男が写っていた。

ジトっとしたこの目…

さっき鏡迷路で見た…?

名前欄には、

静かに、こう記されていた。

『柳瀬 透(やなせ とおる) 当時27歳』

「……柳瀬……透……?」

記事をスクロールする。

“死傷者は15名に及ぶ…”

“死亡者は男女含む五名…”

“動機は不明…”

“犯人は館内トイレに逃げ込み、その場で自殺…”

そして最後の一文。

美咲は声を震わせながら読み上げる。

「……“発見された際、体勢は吊り下がった状態だった”……」

(……さっきの足……絶対……これじゃん……)

ぞくり、と背中に冷たいものが走る。

スマホを握る手が微かに震える。

その瞬間──

空気が急に変わった。

フードコートの奥から、

ズ……ズ……

と何かを引きずる音が聞こえた。

「……え?」

美咲はスマホをそっと下げて、

音のする方を見る。

暗がりの中に、

人影が立っていた。

ズ……ズ……

引きずる音と一緒に人影が、一歩、また一歩、近づいてくる。

美咲はゆっくりと立ち上がる。

目は逸らさなかった。

ズ……ズ……

人影が非常灯の下まで来た…

暗闇に目が慣れてきた美咲には

その人物の姿が少しずつ見えてきた。

腹部がぱっくり裂け、

大量の内臓が重力に負けて垂れ下がっている男だった。

血が滴り、

腸が床に触れ、

そのままズ……ズ……と引きずられていた。

「……っ!!」

(グロ過ぎる!!)

美咲は声を出したら場所が知られてしまうと思い、心の中で叫ぶ。

呼吸は短く、荒くなっていく。

とにかく離れようと、椅子や机を動かさないように後ずさる。

ズ……ズ……

内臓男は無言で美咲の方へ向かって少しずつ近づいてくる。

(何でこっちに来るの?!)

歩くたびに、

内臓がぷらん……ぷらん……と揺れ、

そのたびに、少しずつ血が溢れ出て、

床に落ちていく。

(ああああああ動くたびに出てる……!

止まって……止まって……!)

「…っちょっと、待って!!動くと出るから!!」

内臓を引きずりながら美咲に近寄ってくる男に、思わず声を出してしまった。

内臓男は止まらない。

むしろ歩く速度が上がった。

腸がズザザザ……と床をえぐる勢いで引きずられる。

先程より距離が近づいたからか、生温かい血の臭いが、美咲の鼻を刺した。

美咲は思わず顔を歪める。

「…も、無理!!」

男を正面から見ることも、これ以上距離が縮まることも耐えられなくなった美咲は、思わず駆け出そうとして——足を止めた。

走ったら、その振動で内臓がもっと出てきそうな気がしたのだ。

これ以上グロいものを見たくない。

(……どうしよう…!?)

悩んだ美咲は 早歩きで逃げる。

ザッザッザッザッ…

ズザザ…

ズザッ…

ズズズ…

(何であたしばっかりこんな目にあうの?!)

テーブルの間を、

美咲と内臓男が

“早歩き”でぐるぐると周回する。

ザッザッザッザッ

ズザザッ……

ズザザザッ…

ズザッ……ボトリ……

不気味な音が続く。

(もう、やだ!悠早く来て…!)

美咲が祈るように目をギュッと瞑った。

ーその時だった。

「美咲!お待たせー!大丈夫だった?」

悠がトイレから戻ってきた。

明るい声がフードコートを駆け抜けていく。

先程まで漂っていたツンとした鉄の臭い、

暗く冷たいキンとした空気、

全てがサァーッと引いていくのを感じた。

美咲が勢いよく振り返ると…シンとした、フードコートがあるだけだ。

内臓はみ出し男は…どこにも居ない。

(また、悠が来たら居なくなった…)

美咲はハァッと息を吐いた。

目の前にあった椅子の背もたれに手を掛け、体重を預けて息を整える。

悠が心配して美咲の元へ走り寄った。

「美咲、大丈夫か?また…出たのか?」

「…うん。内臓が出てる男が、追いかけてきてた…。なんか、あたしばっかり変な目に合ってる…。」

「俺、トイレから戻ってくるとき遠くから見えてたんだけどさ……

美咲が一人でフードコートの中を、ぐるぐる歩き回ってるようにしか見えなかった。」

「…お腹切られた男の人…。内臓や血を、裂けたお腹からボロボロ落としながら、追いかけてきたの。」

美咲はフードコートの床に目を向けると

“血と腸が擦れた跡だけ” が残っていた。

美咲は悠を呼ぶと床を指差した。

「……これ、さっきの男の血だと思う!」

「…?ごめん、俺には血じゃなくてただの汚れに見えるんだよ。ただ机とか椅子が移動してるのは分かるよ。」

「…そう。」

(悠には怪異は視えないし、感じない。でも物理的な変化は分かるのか…。)

だから鏡迷路でも、赤い手形は視えないし音も聞こえないけど、叩かれた事による鏡の振動だけは見えてたんだ。

「きっと、現実にあるものへ干渉した時だけ、悠には見えるんだと思う。」

「何冷静に分析してるんだよ……。美咲、また1人にして悪かったな。こんな連続で出るなんて思わなかった。」

悠は申し訳なさそうに眉を下げた。

美咲は首を振る。

「悠は見えないんだもん。普通は“出るかも”なんて思わないよ。」

そう言って、ふっと顔を上げた瞬間──

悠の背後、フードコートの大きな窓ガラスに、

“何か”が映った。

ほんの一瞬。

光の反射のように、細長い影が横切った。

美咲の心臓が、ギュッと縮む。

影は“人の動き”ではなかった。

(……柳瀬 透?)

さっきニュース記事で見た、

あの無表情な男のシルエットが脳裏に焼き付いて離れない。

そのとき、

スッ……。

何か冷たいものが、フードコート内の空気を切り裂いた。

足元から這い上がってくるような、凍りつく冷気。

まるで──

“誰かがすぐ傍を通り抜けた”ように。

そして美咲は気づいていなかった。

その“誰か”が、彼女を見つけたということに。

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